瀬戸内国際芸術祭2022夏-④男木島

男木島

2022.8.18
10:00高松港発→10:40男木港着

 


男木島中心部

og01. 男木島の魂:ジャウメ・プレンサ(2010〜)

港のシンボル。ガラス張りの総合案内所の屋根に多国籍の白い文字が配されていて、内部から見上げると青空が地になり白文字が浮かび上がる。晴天で見上げると爽やか。

 

og02.タコツボル:TEAM 男気(2019〜)

港沿いにデカい蛸壺。タコツボッていた。

 

 

港から東側から攻める

男木漁港周辺街

g17.青空を夢見て:レジーナ・シルベイラ(2016〜)

ファサードが作品、青空のような色。漁港から東へ海岸へと続く住宅街の小道(道幅狭い)の途中でこの建物が出現。建物の敷地は塀と門で閉ざされていて敷地の中には入れないので、前面の道から見上げて鑑賞するか、もしくは建物を周りこむ上り坂になっている横道を登っていけば違う角度から建物を鑑賞できたのかもしれなかったが、前面の道路から見上げるように鑑賞するにとどまった。閉鎖的な雰囲気(案内の人がいない、門が閉ざされている等から立ち止まってゆっくり見るような雰囲気がなかった)を勝手に感じ取り、正直に言ってこの作品はあまり鑑賞していない。

 

og05.漣の家:眞壁陸二

海辺にぶつかり、左折して海辺を歩いていくと倉庫のような建物の妻側面に長さ、幅がまちまちなアクリル板などを並べた作品が登場。色味が青系でまとまっている。作品の説明を読むと、会期中に数回、島民、来場者に空と海の色の板をつくるワークショップを行っていって、板がどんどん増殖していくらしい。この島に他にも作品(og05.路地壁画プロジェクト)を出展しているの眞壁氏の作品だが、色合いが違うものの縦長の板、切り取られたような風景、の表現が同じであるところに、アートってつくづくアーティストそれぞれの世界の見え方、表現の仕方があって面白いなぁ、と思う。

 

 

この建物の日陰で涼んでいる4匹のニャンズ(猫達)に遭遇。人慣れしている、目が細い(頭の大きさに対して小さい)ので眼光が鋭い。島の猫のDNA。

 

og16.歩く方舟:山口啓介(2013〜)

以前は無かったけど男木島といえば…、男木島のアートの代名詞になっているような作品。高松から男木島に向かってくる船からも小さく見えていて、芸術祭目的で島に来た人をワクワクさせる。地元のおばちゃんはキノコと言っていたが、山から足が生えている。海へ向かっているがどこへ行こうとしているのか?

 


男木島中心部

 
引き返し急な坂を登る。
急な坂、家々の間をぬう迷路のような小道、男木島に来た、って実感が湧く。

 

og19.No.105:ワン・テユ(王德瑜)(new!)

屋根しか残っていない手前の廃倉庫とちゃんと壁で覆われている奥の廃倉庫の中に黄緑色のバルーンが常に空気注入中で膨らんでいて、奥の倉庫の方は大きいバルーンが二つ、下部や上部にスリットが開いていて頭を突っ込んで覗いたり、入り込んでみて別のスリットからでできたり、なんか子供の遊具みたいだけど、案内のお兄さんに促されてやってみた、いつもなら体験型の作品は苦手なのだが。バルーンに入ってすぐ出るだけなのでなんてこともないのだけれど、なんじゃこれは、とちょっと自然と笑ってしまった。ふふふ
水と土の芸術祭の作品と素材とやり方が似ている気がしたけれど、作者は別の人。色もコンセプトも違う。

手前倉庫のバルーン

 

og14.漆の家:漆の家プロジェクト(2010〜)

この作品も以前に見ている。新しくフレームが竹で出来ている(節があるので竹と分かる)ロードバイクが新たにおいてあり、もちろん漆塗りで艶々していた。黒、赤、白のそれぞれの色の漆塗の部屋があり、黒と赤は見知った漆という感じだが白い漆は馴染みがない。黒い漆の艶と闇の深さは凄い、陰影礼賛、引き込まれる。

 

og15.部屋の中の部屋:大岩オスカール(2016〜)

和室が90度回転していた、自分が立っている床面が壁にあたり襖と床の間、入って正面の壁が天井で窓を天井照明として見せているので光が自然に感じる、入り口のある壁が床(畳)で丸いちゃぶ台と座布団があり、入って右手の壁は襖に絵が描かれている。180度回転しているのはありそうだけど90度だけ回転してるのが面白い。大岩オスカールさんの作品は白地に黒の絵、平面(一旦大岩さんの脳を通して置き換えられたもの)を過去に何作品か見てきたけれど、こちらは立体空間の作品だし、現実にある和室の部屋にひねりを加えているので、今までの作品とは雰囲気が違っている。入って右手側の壁の襖に描かれている絵だけ何故か視点を90度回転させず0度のままなので、普通に絵画として鑑賞を楽しめる、が視野を広げると回転した和室の中にいることに気づく。
写真をとるなら、ガイドの写真の様に地球側に人や物を置いて引力がどちら側なのかを示さないと、回転していることが分からりにくい。ちょっといただけなのに頭が変な感じになる。

 

og05.男木島 路地壁画プロジェクト wallalley:眞壁陸二(2010〜)

こちらの作品も2010年に初めてこの島を訪れた時からある。海辺にあった"og05.漣の家"と同じ眞壁氏の作品。外壁を島の外壁に合うような色を選んでいるのか、色んな色が施してあるが島の街路に彩りを加えて刺激を与えている。懐かしいし色合いが可愛い。

瀬戸内国際芸術祭2010に撮影

 

og08.アキノリウム:松本秋則(2016〜)

この作品、良かった。

竹で作った色んな種類の楽器が、階段を上がった2階、屋根裏部分に並べられていて、コンコンコロコロカラカラした音が組み合わさって重なってとても可愛らしい音色を出していた。入り口を入って右横の壁にこれらの楽器を影絵で見せていて、まずこの映像を見て先程からする音色の正体は何なんだ?と疑問に思い始めたところで、2階(メゾネット)への階段を上がると竹の楽器達にとり囲まれるようになっていて、その正体を知ることになる。この作品をゆっくりちゃんと味わうことが出来たのは、ちょうど他にお客さんがいなくて一人で他者に気遣うこともなく鑑賞出来たのが大きい。小屋の中のスペースも広く無いので他に鑑賞者がいたらストレスだったと思う。空調が効いてて涼しかったので、可愛らしい音色を聴きながらしばらく涼むことも出来た。

芸術祭の島の展示は空き家を舞台にして展示している作品が多いが、その空間をうまく利用して、環境と作品の相乗効果でより面白い展示になっていたりメリットがある反面、室内が狭い為に中に入れる人数が限られているので、前の部屋や廊下などに他の鑑賞者が後ろに閊えているのが分かると、どうも自分のペースでゆったり鑑賞できないのが空き家を使った展示の難点である。人数制限をして入場を区切っても後ろが待っていると思うといつまでもそこにいる訳にもいかないし(他者に気を使いすぎ?)、ゆっくり鑑賞したいのなら自分が人がいない時を狙うしか解決策はないのか?

 

og18.男木島パビリオン:大岩オスカール・坂 茂 (new!)

港が丸見えの丘の上に建物があり、この建物は建築家、板茂氏の設計、中の襖の絵と海側の窓ガラスに描かれた絵が大岩オスカール氏の作品。前日、大島で作品を観賞した際は、瀬戸内海の海は、もしかしたら島から出ることを許されなかった人とっては自由を奪う恨めしいものに見えたのかもしれない、必ずしも海を見て快感を味わう人ばかりじゃないのかもしれない、と思ったばかりだけれど、私にとっての瀬戸内海は私の閉そく感を救ってくれて自由な気持ちにさせてくれた海であり、こうして作品の中に海があるとなんとも言えない幸福な気持ちになる。

 

og20.学校の先生:エカテリーナ・ムロムツェワ (new!)

こちらも空き家を使った展示。最初の一室目は子供達とのワークショップの風景の写真や絵の描き方の動画等の説明の部屋、2.3室目は子供達の描いた絵と顔の絵が描かれた部屋、4室目は3枚の絵の部屋、5室目は畳の和室の割と大部屋に両側に長尺の紙に墨で描いた絵と真ん中の床に作品が置いてある。2~4室の絵は適当に描いているように見えて配色が美しく、並べてみると色合いが綺麗。紙を水で湿らすことで水彩の滲みが意図しないような不思議な表現になっていた。色彩が好きなので色に目がいってしまった。

2室目か3室目

4室目

島の空き家を使った展示は、美術館での背景が真っ白なところに展示するのと違って、空き家の家屋の環境がアートの一部になっているので、例えば5室目、1番奥の部屋の展示は和室の黒ずんだ壁や暗めの照明との対比で鮮やかな色のアートが映えているような気がした。一方で、こちらの作品に関しては、観賞者の入室している人間の数に対してどの部屋も狭く、後から入って来る鑑賞者に押し出されるように次の部屋に進まなくてはならないので、ゆっくり鑑賞出来るように入り口で人数制限をした方が良いかもしれない。

帰ってきてそれぞれの作品を思い出して感想をまとめていると素晴らしい思い出とともに少しの不満を思いだしたが、帰りの船を待つ空き時間に頼まれた瀬戸内芸術祭のアンケートを書いたときは、細かくこれらの意見を思い出せなくて書くことが出来なかった。瀬戸内国際芸術祭の長年のファンとして、より良くなるよう意見を書ければ良かった、と後になって思う。

 

og07.瀬戸で舞う:川島猛とドリームフレンズ(new!)

会場は2010年と同じ、何度か来ている同じ家。今回は謎のモチーフの繰り返しのアート。



og03.生成するドローイング -日本家屋のために2.0:村山悟郎(2019〜)

一番港に近い作品。1階は襖やら欄間やら梁型やらに鳥のように見える絵、同じモチーフが繰り返し繰り返し描かれている。2階は壁にベニヤ板貼られており、ベニヤをキャンバスに雲のような絵の上にカラフルな網のような絵が描かれていたり、細かな格子の四角を白塗りにして模様が描かれていたりした、下地はベニヤの素地なのに遠目には金のようにも見えてくる。薄暗い部屋もあり、そちらの作品はスポットライトが当たっていて網のような絵もラメというかキラキラする絵の具を使っている、綺麗。私は2階の方が好き。

 

* * *
帰りの船まで2時間もあるのでニャンズ達と戯れに東川の漁港の辺りまでまた行ってみる、途中の島の人達が用意してくれている無料の休憩所に島の猫達のために置いてあるカリカリがあったのでちょっとだけ貰っていって黒ニャンとトラニャンにあげてみた。私以外にも猫に心を奪われている人達が何人かいた。

 

15:00男木港発→女木港経由→15:40高松港

 

これで2泊3日の日程、終了である。
非常に名残惜しい、私が人目を気にしない子供であったなら、男木島の魂:ジャウメ・プレンサにバイバーイと叫んでいただろう、女木島の20世紀の回想:禿鷹墳上にバイバーイと叫んでいただろう(どちらも港もそばの作品)。大人なので人目を気にして外見は落ち着いて船のデッキでしみじみ島とお別れをしている風ではあるが、内心ではバイバーイと叫んでいた、遠ざかる島と作品達にお別れをしたい気分であった。

左:20世紀の回想 右:男木島の魂 ともに2010年に撮影

 


女木島を経由して男木島に着くフェリーのめおん号は2階の後ろ側が外部のデッキになっている、椅子の向きが後ろを向いているので進行方向と逆なのがちょっとアレだけど、船の細い白い鉄柱に囲まれて切り取られて見える瀬戸内海が、遠退いていく島が景色が映画のようで、全く感動する。波も殆どなく乗り心地も最高で、脳が何も考えず活動停止しているような幸福。本当に海の色が美しい。

 

今回の旅、Fin.